院内感染から身を守るためのオゾン

院内感染から身を守るためのオゾン

 新型コロナウイルスによる院内感染が世間を騒がせているようなので、今回は「菌を酸化して殺す(殺菌)」「ウイルス不活化」について書いてみたいと思います。2020年に入ってからというもの、中国を震源地とする新型コロナウイルスで世界中がパニックに陥っています。その新型コロナウイルス騒動が原因で、以前より殺菌や不活化と言う言葉がよく使われるようになってきたように感じます。特に、新型コロナウイルスによる院内感染が注目され、メディアは連日そのことを報道しています。院内感染が問題視されるのは、免疫機能の低下した患者や医療体制圧迫によるストレス過多の医療従事者たちにとって新型コロナウイルスに感染することが致命的になる厄介なウイルスだからです。

 この防止対策として手洗いが短時間で殺菌できる有効な方法であることは政府、厚生労働省、数多くの医療従事者たちが呼びかけてきました。なかでも、藤田医科大学付属病院がオゾンを利用した殺菌消毒を行っていることは話題になりました。

オゾン発生機にて消毒を実施、その後に次亜塩素酸による清拭を行い、最後にUV照射を行っております。
藤田医科大学附属病院

 今やオゾンを利用した殺菌消毒作業は、医療施設において必要不可欠の技術となってきています。殺菌は、厳密には滅菌と消毒がありますが、煮沸などの物理的な方法により殺菌することを滅菌と呼び、科学的な方法により殺菌することを消毒と呼んでいます。ここでは厳密に区別せずに殺菌作用について述べることにします。

 今まで気体中で行う殺菌剤としては塩素、二酸化塩素、一塩化臭素、エチレンオキシドやオゾンなどが使われてきました。いずれの殺菌剤もその効果は酸化力の強さに依存するものです。中でもオゾンはフッ素に次ぐ酸化力があり、塩素と比較するとその効果は6倍超の酸化力があることで知られています。オゾンは、ここに掲げた中では殺菌力が高く、本来の目的からすると殺菌剤の中では最も優れていると言えるでしょう。しかし、オゾンは前述したように高価であり、残存時間が短いため、この二項については他の殺菌剤に1歩譲っていることも事実です。

 殺菌を行うには気体の中で行う場合と液体の中で行う場合とがあります。固体表面を殺菌する場合もありますが、これは気体の中で行う場合と同じと考えてよいでしょう。殺菌の対象となる菌やウイルスは無限とも言えるほど種類は多くありますが、これまでに水中で検討された微生物をリストアップしたのが表3-3になります。ここにリストアップされたいずれの微生物も比較的短時間で不活化率がほぼ100%に達しており、ほとんどの微生物はここに示された処理条件で不活化したことを示しています。
ここで不活化率とは、保存による殺菌処理をする前の微生物の数とこの数のうち、オゾン殺菌によって取り除かれた数の割合で示しています。

 この表の結果から、殺菌にはオゾン処理がいかに有効であるかがわかります。また実際にオゾンに対するいろいろな微生物の耐性を表の中では殺菌作用定数CTとして評価しています。
このCTとは、オゾン濃度C(mg/ℓ)と接触時間T(分)の積で表され、殺菌作用はCTに逆比例していています。表中の値は、99%微生物を不活化するCT値で評価しています。また、CTが小さいほどオゾン処理がしやすい微生物であることを意味しており、不活化率やCT値をみると、ほとんどの微生物はオゾンによる殺菌効果が顕著に現れていると言えます。しかし、微生物によってはあまり処理効果の高くないものもあることがわかります。オゾン殺菌とは、対象とする菌を酸化して活性を失わせてしまうことであり、気体・液体による区別も分類もないのです。